今回は、前回までの貸借対照表の分析の仕方を踏まえて、「貸借対照表計画の作成の仕方」を見ていきます。
実務で貸借対照表計画を策定されているところは少ないと思いますが、なぜ貸借対照表計画を作る意味があるのでしょう?その目的について考えて見ます。
まず、損益計画では表せない会社の資産に関するる重要な施策を検討し、それを明確にすることです。
二つ目は、現預金の在り高を予測し、借入や増資などの資金調達の必要性を前もって知るためです。
三つ目は、上記の資産、および借入や増資にかかる会社の施策と、損益計画からもたらされる会社の利益が、総合的にどう関連して数字として反映されるのかを把握し理解するためです。
貸借対照表計画は、細かいことは気にせず、Excel(注1)を使って次の順番で作成していくと良いでしょう。
前年同期との増減額をシミュレーションできる表を作成しておいて、そこに計画期の金額を入れていきシミュレーションします。
(注1)前年同期の貸借対照表は、各勘定科目の合計を計算式で集計項目に足し算し、最後に貸借の合計額が合っているか確認しますが、計画期の貸借対照表は、現預金勘定の金額が最後に計算式で導かれるように、計算式を組み替えます。
@まず、各勘定科目について前年並みで今期の数字を作成します。
前年並みというのは、前年同期(当期末)の数字と同じ数字を計画初年度末の数字とすることを基本としますが、約定により返済が決まっている借入金や貸付金等はその金額を減額します。
売上債権や仕入債務、および棚卸資産は、その回転期間(1か月平均の売上高や売上原価で除した数字)を、前年同期と同じになるように調整します。
A損益計画と関連する科目については、その金額を反映させます。
純利益については、配当金の支払いを控除した金額が、利益剰余金の増加額となり、純損失の場合は、その金額が利益剰余金の減少額となります。
減価償却費は、貸借対照表の固定資産の科目別に、それぞれの減価償却費の金額を減額します。
未払法人税や未払消費税は、当期の損益計画から導かれる税額相当の金額を反映させます。
B資産科目について、経営政策として意思を持って増減させる金額を反映させます。
固定資産の購入予定のあるものはその金額をプラスしますが、購入後の減価償却費もその分増加させます。
売上債権回転期間や棚卸資産回転期間を減らす施策をとるのなら、その分売上債権や棚卸資産の金額を減額します。
C現預金の残高が運転資金として必要な金額だけ残っているか確認します。必要な金額以上残っていないのなら、今までの計画はどこか見直さなければなりません。
借入金を増やしたり借換えしたりすべきなのか、固定資産の購入金額を減らすべきなのか、売上債権や棚卸資産をもっと減らすべきなのか、といったことを検討します。
そうした手が打てないのなら、損益計画に戻って計画を検討しなおさなければなりません。売上をもっと増やせないか、売買利益率の改善はできないか、販管費の支出をもっと抑えることができないかといったことです。
貸借対照表計画の例として、次のG社のケースを見てみましょう(簡略化のため法人税等は省略しています)。
a.経常利益額が利益剰余金の増減額となります(緑色の枠囲み部分)。売上債権・棚卸資産・仕入債務は、計画初年度・2年目とも当期の回転期間と同じになるよう、Excelの計算式を組んでいます。
b.減価償却費は、計画初年度はそのまま器具備品の減額としていますが、2年目の始めに700万円の新規設備の導入を予定しており、2年目の器具備品は通常の減価償却費と新規設備の減価償却費分のマイナスと新規設備のプラスで、差し引き4百万円増加しています。
c.これに伴い、700万円の融資を受けており、2年目の長期借入金はそれまでの年間返済額200万円と新規借入分返済の100万円のマイナスと、新規借入の700万円のプラスで差引400万円の増加となっています。
d.これらのシミュレーションの結果として、Excelの自動計算による現預金の残高は、計画初年度が262千円、2年目が414千円しか残っていません(赤色の枠囲み部分)。
期末にこの残高しか残っていないのでは、期中の資金需要の多い日に、資金不足となってしまいます。
従って、このままの計画では無理があるので、上記Cのような見直しを行わねばなりません。
このような経営計画は役に立たなくなる可能性があります |
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その㉒ |
現預金の収支残高についてチェックできていない。 |
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