前回、貸借対照表の分析に重要なことは、「純資産」の大きさ、すなわち自己資本比率の高さであると述べました。
次に重視するポイントは、貸借対照表の左側、「資産」の中身です。
貸借対照表に計上されている「資産」の帳簿価額と、時価との間に大きな差異は無いか、あるいは「資産」の中に不良資産は無いかといったことに注目します。
沢山の財産を持っているように見えても、置き古して劣化した資産や、売れなくなった在庫商品、倒産した会社に対する債権などが多く含まれていると、見た目よりも実際の財政状態は随分悪いということになります。
一方、貸借対照表の資産は取得した時の価格で計上されているため、土地や有価証券など時価が相場により上下する資産は、どうしても帳簿価額と時価との乖離が生じてしまいます。
このような理由で、実際の「資産」の価値が帳簿価額より低い状態は「含み損」があると言い、実際の「資産」の価値が帳簿価額より高い状態は「含み益」があると言います。
経営者は、この「含み損益」を修正した実際の「資産」の価額を、しっかりと認識しておかねばなりません。
回収できない債権、売れない在庫など、まともに換金できないような資産が財産として貸借対照表に計上されているということは、自社の財政状態が見た目より悪いということであり、自社の今までの期間損益は本当はもっと悪かったということになります。
何よりも、こうした不良資産が処理されずに帳簿に残っているということは、従業員に「このような売り方、仕入れ方でいいんだ。」という認識を持たせ、ずさんな社内風土を定着させかねません。
一方、土地や有価証券など、時価が相場により上下する資産に関する「含み損益」については別の意味があり、会社が借入を行う場合の担保価値などに大きな影響を及ぼしますので、経営者自身の責任でしっかりとその価値を認識しておかねばなりません。
金融機関などは融資の際に、この「含み損益」を除外した実際の価値で「資産」を評価した貸借対照表がどうなのかを見るわけです。
例えば、下図[左側]の貸借対照表を持つ会社が、自己資本比率が40%で経営が安定していると思っていても、不良資産や時価の下がった有価証券が多く、現在価値は30少ない(=含み損が30)あるとしたら、下図[右側]のように自己資本比率が10%と危険水域であったということになりかねません。
主な「資産」の勘定科目ごとに、見るべきポイントを記載しておきます。
@現金・・・中小企業では意外と実際の現金と帳簿の残高が合っていないケースがあります。ずさんな経営管 理状態を象徴するもので、不正の温床となり誤りも発見されにくくなりますので、必ず合わせるように努力しましょう。税務調査が入れば足らない分は経営者の課税所得となる可能性があります。
A売掛金・・・古いものが残っていないか、残っていれば原因は何故なのか、必ずチェックしましょう。基本的には、請求書どおりに回収できなければ、その時に差異の原因を必ず追究しておくことが肝心です。
B受取手形・・・ジャンプ(期日の延長)を要望されたものは無いか注意します。自己資本比率や売上債権回転率などを見る場合には、割引手形を含めて判断します。
C商品・製品・材料など・・・通常の価格では売れなくなったもの、長期間滞留しているものなどが残っていないかチェックします。現物在庫が帳簿在庫と合っているか、実際に棚卸しを行い確認されているかをチェックすることも大切です。
D仮払金など・・・何故その残高が残っているのか、必ず理由をチェックします。税務調査では経営者に対する貸付金や給与にあたるものが無いか指摘を受ける可能性が高いです。
E固定資産・・・既に廃棄されたものや廃棄すべきものが残っていないか、減価償却費がきちんと計上されているか、どのような方法で計上されているかなどをチェックします。また特別償却や税額控除、圧縮記帳など、税制上の特典を受けることができるものは適切に処理されているかについてもチェックします。
このような経営計画は役に立たなくなる可能性があります |
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そのS |
資産の「含み損益」の点検ができていない。 |
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