前回は、貸借対照表に計上されている「資産」の中身をしっかりと把握することが大切だということを書きました。
今回は、今期末の貸借対照表を前期末のものと比較することによって、どういうことが分かるかについて書きます。
下記ケース7のG社の事例を使って見ていきますが、まず、損益計算書との関係で押さえておくべきポイントについて考えてみましょう。
@当期の損益計算書に示されている経常利益520千円は、下段の比較貸借対照表では、利益剰余金の増520千円として表われてきます(単純化のため法人税等は考慮に入れていません)。
配当金の支出が無かったので、利益の額がそのまま「純資産」として残ったということが分かります。
A売上が前年と同額であったにもかかわらず売上債権が1,500千円増加しています。このことにより売上債権回転期間(売上債権÷月平均売上高)が、前期(25,000÷(100,000÷12)=3.0か月)から、当期(26,500÷(100,000÷12)=3.2か月)に伸びています。
新しい商品群の拡販のために増やした新しい取引先からの手形サイトが長く、従来の取引先より条件が悪かったからかもしれません。
B棚卸資産は、前年より600千円減少しています。棚卸資産回転期間(棚卸資産÷月平均売上原価)は、前期(10,500÷(62,500÷12)=2.0か月)と、当期(10,100÷(59,780÷12)=2.0か月)と変わりません。
新しい商品群の売上原価率が下がっている(62.5%→59.8%)ため、同じ回転期間でも棚卸資産は金額的には減少しています。
このほかにも前年比較の増減金額が大きい科目については、その原因は何なのかよく分析しておくことが大切です。
C損益計算書の減価償却費と貸借対照表の減価償却資産(器具備品)の関係を見ておきます。今期の減価償却費3,000千円は、器具備品の減少3,000千円につながるはずですが、2,000千円しか減少していません。
ここから差額の1,000千円分の器具備品の購入があったものと推測されます。それが今期の経営実態と合っているか確かめます。
D長期借入金は2,000千円減少していますが、借入金については約定通り返済しているか確認しておきます。約定通りの年間返済額よりも減少額が少ない場合は、期中に新たな借入れや借換えを行っているか、または返済を猶予してもらっているのかを確かめます。
E現預金が1,080千円減少しています。大雑把に言って、経常利益520千円+減価償却費3,000千円=3,520千円の収入があったものの、借入金の返済2,000千円+器具備品の購入1,000千円+売掛金の増1,500千円=4,500千円の支出増があるため、収支差額の約1,000千円分の現預金の減少となったわけです。
この利益水準では、借入金を返済し、新たな資産の購入や、運転資金の増加に対応していくのは厳しくなってくるなという認識をしておかねばなりません。
そのため、後日のテーマである、「資金繰り計画書」の作成が重要となってきます。
このように貸借対照表は、現在の財政状態に加えて、以前のものと比較することによって、その期間に起こった色々な取引の状況や、重要な資産・借入の増減などが見えてきます。
一般的に、損益計算書はその期間の成績を表すものであり、貸借対照表はその時点の財政状態を表すものと言われますが、以前のものと比較することにより、貸借対照表はその期間の全般的な経営成績を表すものともなるのです。
今回の比較貸借対照表の作り方、読み方は、次回に述べる「貸借対照表計画」を作成する時の基本的な手法となります。
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貸借対照表科目の増減について無関心 |
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