サンウルブズのスーパーラグビー参戦3年目のシーズンが終了した。1年目1勝、2年目2勝、3年目3勝。1つずつしか上がっていないが、チーム力は随分と上がって来たと思う。
スーパーラグビーは、ニュージーランドから5チーム、オーストラリアから4チーム、南アから4チーム。あとアルゼンチンから1チームと日本から1チーム。
今期は15チームで争ったが、前期は18チーム。オーストラリアの1チームと南アの2チームが削減され、それらのチームに所属していた選手が他のチームに流れているので、各チームの選手層が厚くなり弱いチームが無くなった。
今期のサンウルブズは前半の8試合、勝ち星がなく、我々ファンを失望させたが、後半の8試合は3勝5敗。
最後の2試合は、前半終了間際にレッドカードで退場者を出し、後半は14人で戦うことになったので大敗したが、前半はいずれも接戦で勝てそうでもあった。
今期良くなった点は、まず組織ディフェンスが上達し、簡単にトライを取られることが少なくなった。
また、ラインアウトが良くなり、セットプレーでマイボールを失うことが少なくなった。
そして、連続プレーでの速いパス回しによるアタックに磨きがかかり、美しいトライがたくさんあった。
これらにより、勇敢なタックルとスピーディなアタックというサンウルブズの特徴が定着してきたように思う。
今年のサンウルブズのメンバーは、46人の内、半分の23人が外人。
外人の多いことに違和感を持つ人も多いかもしれないが、その外人たちがチームプレーに徹し、かつサンウルブズの練習と試合を通じて、大きく成長した。
例えば、
ピーター・ラピース・ラブスカフニは、前半戦フランカーとしてほとんどの試合に出場。ジャッカルの回数とディフェンスの固さは、スーパーラグビーの全チームの中でもトップクラス(残念ながらクボタとの契約のため後半戦は離脱した)。
マイケル・リトルはセンターでほとんどの試合に出場。ボールを持てば、相手との間合いがない時でも必ず前進。トライに繋がったプレーの多さはチーム一だと思う。
ヘイデン・パーカーは、前半は怪我で出場が少なかったが、後半戦にキックで大活躍。プレースキックの成功率96%は、スーパーラグビーの2位を10%程度引き離してダントツの1位。
グラント・ハッティングは、待望の2mを超える身長のロック。ラインアウトの安定に力を発揮しただけでなく、タックルもよく行くし、トライに結びつく突進も多かった。
彼らのプレーは、どんな強い相手との試合でも、目立って通用した。また、アタックだけでなくディフェンスも、極めて真面目に必死でプレーしている様子がよくわかった。
彼ら4人は、今年からサンウルブズに加わった。過去に、他のスーパーラグビーのチームでプレーをしたこともある。だが、他のチームでレギュラーに定着しスターであったわけではない。
サンウルブズで成長し一流の選手に育ってきたのである。
サンウルブズの水が合い、サンウルブズのスタイルが合ったのだろう。
他の多くの外人選手も同様である。外国の有名選手がシーズンオフに出稼ぎに来るケースとは全く異なる。
元々、日本がサンウルブズのチームでスーパーラグビーに参戦することとなった目的は、日本代表(ジャパン)の強化である。
昔から、世界ランキング10位以下のチームは、なかなかティア1と言われるラグビー強国とのテストマッチ(国代表同士の試合)を組むことは難しかった。 テストマッチを組めても相手は若手で組んだ2軍というようなケースが多かった。
これではなかなかジャパンの強化が図れないので、テストマッチレベルの試合を年に10試合以上組める世界最強のリーグ、スーパーラグビーに、日本チームとして加盟させてもらうこととなった。
3年目まで苦戦が続いているが、確実にサンウルブズのチーム力は向上している。
しかし、サンウルブズの選手が全て日本代表の資格を持つかというとそうではない。
日本代表の条件は、まず他国での代表歴がないこと。
そして次の3つの条件のうち一つでも当てはまれば日本代表資格が得られる。
・出生地が日本
・両親または祖父母のうち1人が日本出身
・日本に3年以上継続して居住している(2020年12月31日からは、5年以上の条件に変わる)
さらに、以下の条件でも代表資格は取得できるが、稀なケースである。
・日本国籍を取得後、7人制(セブンズ)日本代表としてセブンズワールドシリーズに4戦以上出場
・日本での累積10年の居住
上記の4人で言えば、ピーター・ラピース・ラブスカフニと、グラント・ハッティングは2019年のワールドカップに間に合うが、ヘイデン・パーカーとマイケル・リトルは残念ながら間に合わない。
「どうして来年日本開催のワールドカップに間に合わない選手をサンウルブズで使うのか?」という批判もあるようではあるが、スーパーラグビーはプロリーグである以上、勝つ試合、観客の集まる試合をしなければならない。 日本代表強化のためというのは、日本の勝手な事情である。
サンウルブズと同時期に、アルゼンチンから参戦したジャガーズは、ほとんどがアルゼンチン代表の選手だが、こちらは今年、南アフリカカンファレンスの2位につけているので問題ないのであろう。
最近の情報では、日本ラグビー協会の一部で、2020年以降のスーパーラグビーから離脱するような意向があると言う。
サンウルブズの多くの選手は、トップリーグの日本の企業チームに所属しており、そちらとの契約問題がややこしいのかもしれないが、3年間、サンウルブズの試合を全て観戦し応援してきたファンとしては、残念至極で腹立たしい思いである。
15か国の選手からなる混合チームという特色を持つサンウルブズを、日本代表の育成という当初の目的を超えて応援するようになったファンも多いことを理解して欲しい。
サンウルブズが在るからこそ、スーパーラグビーという世界最高峰のラグビーを見るのがおもしろいのである。
今はまだコアのファンしかいないかもしれないが、継続は力である。サンウルブズの火を消さないで欲しい。
サンウルブズ公式ホームページ
楕円球 〜日々思う〜 バックナンバー(ラグビー狂の筆者が、ラグビー日本代表へのエールを通じて、ラグビーの魅力を語ります)
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日本ラグビーフットボール協会 公式ホームページ