前回、経営計画を経営力の向上に役立つものとするには、PDCAマネジメントサイクルを回すしくみを組織的に整備しておくことが大切だと書きました。
そのためには、Plan(計画)に対して、Check(評価)を適切に行うことができるように、会計システムを整備しておかねばなりません。
具体的には、会計システムについて、次の損益計算書を作成することができるように整備しておかねばなりません。
@部門別損益計算書
A月次損益計算書
B予算と実績の比較損益計算書
これらは、別々に作成するのではなく、@ABは一緒にして、「部門別の月次損益計算書を、予算と実績を対比させて作成する」のです。
しかし、システム設計の際には@ABは別々に仕様を検討するため、今回は、まず部門別損益計算書について。
このシリーズの㉚予算化(1)において、各組織を管理する責任者の部門単位で、部門別の予算を作成することが大切であると書きました。
そして、各部門長がPDCAマネジメントサイクルを回して管理するためには、各部門の実績が、予算に対してどうであったかを、点検し評価するための会計システムを構築しておかねばなりません。
各部門の責任者には、予算達成についての責任を持ってもらうわけですから、その責任者が自部門の成績を点検し評価することのできる部門別損益計算書のしくみを提供することが必要なのです。
部門別損益計算書を作成する時のポイントの一つは、共通費の処理をどうするかです。
各部門でかかった直接費は、もちろんそれぞれの部門の費用とするわけですが、本社の管理部門の費用や工場の間接部門の経費など、利益を生み出す部門以外の部門の費用や、全社的な共通費用(以下、共通費と言います)を、利益を生み出す部門に負担してもらうのかどうかという問題です。
共通費を利益を生み出す部門に負担してもらう場合は、費用の配賦方法について決めておき、期間損益計算の段階で、共通費を各部門に配賦し負担してもらいます。
その配賦の方法は、共通費を科目ごとに、適切な比率を決めておいて各部門に配賦するのが一般的です。
管理部門の人件費を、各部門の売上高の比率で配賦したり、建物や土地にかかる費用を、各部門に所属する社員の数で配賦したりします。
この方法をとる場合のメリットは、各部門長に、共通費を負担した上で利益を生み出さねばならないという意識を持たせることにありますが、一方で、自分ではどうにもならない共通費が予算と実績の差異に大きな影響を及ぼすというデメリットもあります。
直接的な自部門の費用について、しっかりと管理したのに、振り替えられた共通費が予算よりオーバーしたため、目標とした利益を達成できなかったというのでは、各部門の士気が落ちてしまいます。
こういうケースを避けるためには、共通費は各部門に配賦せずに、管理部門の責任者などが責任を持って、共通費の予算と実績の差異について点検し評価するルールとした方が良いケースが多いです。
配賦計算のしくみづくりは複雑で面倒なこともありますので、配賦ができるだけ少なくなるようなシンプルな会計システムを構築することが望まれます。
このような経営計画は役に立たなくなる可能性があります |
⇩
その㉟ |
部門別の損益計算書が作成されていない。 |
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