ラグビーワールドカップの開幕戦は、9月20日。ジャパン対ロシア@味の素スタジアム。二カ月を切った。
今年に入って日本代表チームは、サンウルブズとウルフパックの2チームに分かれ、ワールドカップに出る資格を持つ主力はウルフパックという名の即席チームで、行った試合はスーパーラグビーの二軍等を相手に4試合だけ(長期間のハードな合宿は行っているが)。どれだけ力がついてきているのか分からない状況で、我々ファンを不安にさせている。
その間、サンウルブズが再来年からスーパーラグビーからはずされることが発表(たいへん残念なことだ)され、発表後のサンウルブズは散々な成績に終わった。
ラグビーファンにとっては、何とも歯がゆい期間が過ぎたが、7月に入って、今まで顔の見えない日本ラグビーフットボール協会の理事が刷新され、熱血漢ヒゲの森重隆会長(明治大学➡新日鉄釜石)の下、清宮克幸副会長・岩渕健輔専務理事と、以前からマスコミにしっかりとした意見を表明しているメンバーが中心を担うこととなり、協会は将来へ向けて大きな期待のできる陣容となったと思う。
それでも、今年日本で開催されるワールドカップにジャパンが良い成績を残せるかどうかは、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの指揮する、現在の日本代表メンバーがいかに実践力を高めることができているかにかかっている。7月27日から始まるパシフィックネーションズカップでの、フィジー戦、トンガ戦、アメリカ戦で、我々を安心させてくれるような戦いを見せてくれることを期待するしかない。
【ワールドカップ公式球シリウス】
さて、今日は楕円球=ラグビーボールの話。
ラグビーマガジンの広告を見て、2019ワールドカップの公式球シリウスを買った。
通常7,000円位のラグビーボールが、17,000円位。どこが違うかというと、ゴムの表面の小さなポツポツの突起が、星形になっており、手に吸い付くような感じで滑りにくいとのこと。確かに、私の小さな手でも片手でボールを掴んでも落ちない。最近は、ノックオンでボールを落とすことが少なくなっているのも納得だ。
【昔は皮のボールを磨いた】
ラグビーをやっていなかった人のために、私の現役時代(昭和45年から52年)のラグビーボールのお手入れ方法の話をする。
上記の写真は、ロンドン郊外のトウィッケナムラグビー場(ラガーマンの聖地)内にあるラグビー博物館で写した写真だが、左の写真のラグビーボール達は、最近のゴムボールになる前の4枚皮でできたラグビーボール。
右の丸いボールは、もっと古い6枚皮でできたラグビーボール。
私の現役時代は、6枚皮のラグビーボールで始まり、途中で4枚皮のラグビーボールとなった。
皮は磨かないと表面の滑りが悪くなるし長持ちしない。パスを上手にするには適度な表面の滑りが大事であった。何より、金のない学生ラグビー部はボールを大切に扱い長持ちさせねばならない。
従って、下級生は練習後にボールを磨く仕事があった。道具はツバをかけて布で磨く。この野蛮で原始的な方法が、どこの高校・大学でも採用されていたように思う。一個当たり20分ほどかかったであろうか。並んで座りおしゃべりをしながらボールを磨くことで、ラグビー部の同級生は固い絆で結ばれることとなる。
右側の写真のボールは楕円というより丸に近い。我々の高校時代は土のグラウンドであった。雨降りの練習の後のボールは、水と泥を吸って重い。これを光らすまで磨くのは大変な時間と労力が要る。磨くのに光りやすい布はないか、ツバより光りやすくかつベタつかない材料はないか、など知恵を絞り試してみる。
古くなったボールは、だんだんと楕円球でなくなってきて丸くなってくる。右側のボールのように丸くなってきたボールは妊娠球と呼んでいた。空気を入れたまま保存すると早く太ってくるので、毎日皮の紐をニードルという道具でほどき、中からゴムの口を出して空気を抜いて保管した。翌日は練習前に来て、空気を入れてニードルで縫い上げて楕円球を準備する。
大学に入った後、紐をほどく必要は無くなり、ヘソに針を刺して空気の出し入れをする左の写真のボールのような構造となった。現在のゴムボールのお手入れをどうしているかは知らないが、もはや下級生がボールのお手入れをしながら絆を強くする、あの独特の時間は存在しないのであろう。
【ラグビーボールはなぜ楕円球なのか?】
ラグビーボールはなぜ楕円球なのか?
通説では、初期の頃(1850年頃)、豚の膀胱に空気を入れたものをボールとして使っていたからという。
上記トウィッケナムのラグビー博物館では、どう言っているかみてみよう。
左の写真は、1820年代、ラグビーとサッカーが分かれる前のボールではないかと言っている。
ラグビーは、英国のラグビー校が発祥の地とされているが、そのラグビー校で使われていたボールが、このボールらしい。丸い形である。
右の写真は、ボール製造所のリチャード・リンドン氏が、初めてゴムの袋に空気を入れて作ったラグビーボールとのことである。手に提げているものは、丸く見える。
それまでは、豚の膀胱に空気を入れて、それに皮を被せてラグビーボールとしていたらしい。ところが、豚の膀胱に空気をいれるのはかなり辛くて嫌な仕事だったらしくて、リンドン氏の妻は藁のストローで空気を注入していたところ、それが原因で病気になってしまったらしい。そこで、リンドン氏が、ゴムの袋に空気を入れて皮を被せる構造に変えたものを考案し提供するようになったと書いてある。
ラグビーボールの初期の頃に、豚の膀胱に空気を入れて皮を被せて使っていたというのは真実のようだが、それが楕円球になった理由とは関係ないようである。
リンドン氏の写真の下の方に書いてあるのだが、ラグビーというスポーツが、キックよりもパスやランを多用するようになって、ラグビーボールもパスのしやすい、抱えて走りやすい楕円球に進化していったというのが真相のようである。
球体よりも、楕円球の方が皮を貼りやすいという理由もあったかもしれない。
【どちらに転がるか分からない?】
「楕円球はどちらに転がるか分からないので、それがおもしろい。」ということを書かれていることがよくあるが、これは本当か?
ラグビーにおいては、Yesでもあり、Noでもあると思う。
毎日楕円球で練習し、慣れると、楕円球だから困るということはほとんどない。上記「なぜラグビーは楕円球なのか?」で書いたように、楕円球はパスしやすく、抱えて走りやすい。蹴ることも難しくない。問題は地面に落ちたボールである。しかし、「地面に落ちたボールが思わぬところに転がったために、それが試合の勝ち負けを左右した」というケースにはほとんどお目にかからない。練習を積めば、蹴ったボールであっても楕円球をかなりコントロールできる。むしろ練習で身に着けることのできる体力・走力・技術力・チーム力・経験などで、勝負はほとんど決まるのである。実力のあるものが勝つのである。
一方で、稀にではあるが、跳ね返った楕円球の行先により、勝負が決まることがある。むしろバウンドしたボールが敵の手に入ってしまった、あるいはラインから外に出てしまった、などということでトライの成否が変わることはよくある。実力だけでは計り知れない、人知の及ばないケースも起こりうるのである。これが、楕円球のもたらしてくれる深みなのかと思う。
楕円球 〜日々思う〜 バックナンバー(ラグビー狂の筆者が、ラグビー日本代表へのエールを通じて、ラグビーの魅力を語ります)
ラグビーワールドカップ2019日本大会の公式ホームページ
日本ラグビーフットボール協会 公式ホームページ
作成日:2019/07/22
ラグビーボール(楕円球)