サクラフィフティーンの戦いぶりに感動したことは前々回に書いた。
アイルランドで行われた女子ラグビーワールドカップ大会では、1勝4敗の11位に終わったが、素早い展開ラグビーと低いタックルは、男子日本代表と同じくジャパンチームの特徴として、ラグビーファンを魅せるものであった。
その中でも、5戦とも先発のスクラムハーフ(9番)を担った津久井萌のプレーぶりは痛快であった。
身長152p、体重53s、高校3年生。大会参加選手中で、最軽量で、かつ最年少。
球さばきは軽快で、スピードのあるロングパスで展開ラグビーの起点となる。
自分よりはるかに重い相手を、臆することなく低いタックルで倒す。
オーストラリア戦では、独走になりかけた相手を一人で倒し、すぐに立ち上がってボールを獲得。逆襲しダミーパスの後、タイミングの良いパスを通してセンター黒木の独走トライを生んだ。見事であった。
ワールドカップアイルランド大会のベストフィフティーンに、6位以下のチームでただ一人選ばれる栄誉を得た。
今後が楽しみである。
さて、スクラムハーフ(9番)という特殊なポジションについて。
何が特殊かというと、このポジションだけは身体の小さい方が有利なケースがあることだ。
スクラムやラックから出た地面にあるボールを、素早く味方にパスすることが、一番の任務となる。腰の位置が低くて、俊敏であるためには身体の小ささが武器になることがある。
若くして故人となった日本を代表するスクラムハーフ、早稲田の宿沢や慶応の上田も小さなラガーマンだった。
現在のスクラムハーフに求められるものは、彼らの時代と同じく、俊敏性、球さばきの良さ、キック力、そして大きなものを恐れぬタックル力などがある。
彼らの時代と変わったのは、スクリューボールを投げることと、バックスラインの前に並ぶフォワードに対してゴールラインと平行に近いパスを投げること。
昔は、とにかく早くスタンドオフにパスを回すため、ダイビングパスも多用した。
スクラムハーフがスクリューボールを投げるようになってからは、速く長いパスを投げることができるようになり、ダイビングをしていては次の地点へ行くのが遅れるのでダイビングパスは無くなった。
バックスの前に並んだフォワードに、この速いスクリューパスを平行に出すことが、今は大きな武器となっている。相手ディフェンスがずれていれば、すぐにゲインラインを切れるからだ。
このキラーパスを出すのに最も長けているのは、日本代表スクラムハーフの田中史朗だろう。
田中は、日本人でスーパーラグビーに参戦した先駆者の一人。ニュージーランドのハイランダーズではニュージーランド代表のアーロン・スミスがいたため、準レギュラーだったが小さな身体で勇敢に立ち向かう姿からチームで2番目の人気者だったという。
2015年のワールドカップでも活躍したが、その後もさらに成長しているように感じる。
キックについて。スクラムハーフに求められる重要なキックは、スクラムやラックから出たボールを間髪入れずに蹴るハイパント。相手のフォワードを越して自分の後ろからボールを追いかけるバックスが丁度追い付く位の地点に落とすことのできる高いパント、ボックスキックである。
2015年ワールドカップで唯一負けたスコットランド戦。相手のキャプテンであるスクラムハーフのグレイグ・レイドローにこのハイパントでやられた(レイドローには、正確なプレースキックでもやられたが)。
従来、日本のスクラムハーフはこのキックの上手な使い手は少なかったと思う。それは、日本が素早いパス回しによる展開ラグビーに力を入れていたことが理由でもあるだろう。
2015年ワールドカップの後、日本代表のヘッドコーチがジェイミー・ジョセフに変わってから、キックを多用する戦術に変わり、やっと今年から日本のスクラムハーフ達もこのボックスキックが上手になってきたと思うが、まだまだだ。
スクラムハーフに求められるもの。先に書いた、早くて長く正確なパス。そして、素早く正確なハイパント。
後は、チャンスと見れば自分でボールを持って突破していく走力。そして、大きな相手に決して怯まないタックル力。
そして、これら沢山の選択肢から、瞬時にベストな選択をできる判断力。
茂野海人26才(トヨタ)、流大24才(サントリー)、矢富勇毅32才(ヤマハ)、内田啓介25才(パナソニック)、小山大輝22才(パナソニック)など、日本代表の候補は沢山いるが、現在のところやはりナンバー1は、総合力で田中史朗32才(パナソニック)だろう。
2019年のワールドカップ(日本開催)へ向けて、田中を超えるスクラムハーフが育つことが、ベスト4へ向けての一つの鍵となると思う。
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次の日本代表(男子)の試合
10/28(土) 対 世界選抜 @福岡 レベルファイブスタジアム
11/ 4(土) 対 オーストラリア代表 @横浜 日産スタジアム
11/25(土) 対 フランス代表 @フランス スタッド・ピエール・モーロア
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