ラグビー日本代表チームのフルバック(15番)として、6月のテストマッチ3試合に出場した野口竜司の評判が良い。
日本代表チームの最年少。東海大学4年生。今年1月の大学選手権では、帝京大学に決勝で敗れたが、野口のランニングは何度も帝京大学のディフェンスを突破し、目を引いた。
6月のルーマニア戦とアイルランド戦では、ディフェンスの安定感と、アタック時の突破力が光った。
フルバックと言えば、2015年のワールドカップで大活躍した五郎丸歩。ディフェンスの安定感と、キック力が素晴らしかった。スコットランド戦の前半最後の相手ウィングのトライを阻んだタックルは強烈な印象を残した。
ルックスも良く、インタビュー時の受け答えも、真摯かつ謙虚であり、好感度抜群。ラグビーファンの拡大に大きく貢献した。
しかし、スーパーラグビーはサンウルブズでなく、オーストラリアのレッズに所属、その後フランスのトゥーロンに移籍するが、レギュラーになれずに試合に出ることは少なかった。
この度、ヤマハ発動機に復帰することとなったが、ヤマハのフルバックには昨年のトップリーグでbPフルバックとも思えるファンデンヒィーファーがおり、今年レギュラーを取ることは簡単ではない。
日本代表のフルバックに求められるもの。それは@ディフェンスの安定感。Aキック力。Bランニングによる突破力。の三つだと思う。
@ディフェンスの安定感。
フルバックは味方の最後尾に位置することが多いので、ミスをすると致命傷となる可能性が高い。相手のロングキックをキャッチしに行ってノックオンの反則をすれば、折角苦労を重ねて敵陣深く攻め込んでいたものが、一気に自陣まで陣地を取り戻され、ピンチに陥る。味方の選手も応援する観客も「アーア」となるやつである。
相手のハイパントに対しては、全速力で向かってくる敵とジャンプしながら競り合ってボールを獲得する。落とさないまでもそこでつぶされ、相手にボールを奪取されればやはり大ピンチである。
走ってくる相手に対する最後の砦としてのタックルは、激しく確実なものが求められる。
野口も、サンウルブズのフルバックとしてレギュラーの松島幸太朗も、この点については身体が大きくないにかかわらず、極めて安定感があり優秀である。
Aキック力。
先ほどの話とは逆に、自陣でピンチの時に、ロングキックを相手のいない場所に落としタッチに出せば、一発で陣地を挽回できる。それまで必死で守り続けてへとへとだった味方はほっと一息つける。
また、蹴った選手の後ろにいる選手しかボールを追いかけることのできないラグビーにおいて、自らが追いかけてボールを獲得できるようなハイパントを蹴ることができるフルバックは、ディフェンスからアタックへと局面を転換することができる頼もしい存在だ。
五郎丸と昨年のサンウルブズのレギュラーフルバックのフィルヨーンは、このキック力が抜群であった。両選手は、ゴールキックも距離が出る上に正確である。(ゴールキックは誰が蹴っても良いが、キックの得意なスタンドオフかフルバックが蹴ることが多い。)
Bランニングによる突破力。
キックは、敵にボールを渡し攻撃権を渡してしまう確率が高い。だから、敵のキックをキャッチし、蹴り返すのではなく、ランニングで敵を突破し前進すれば、味方にとって大きなアドバンテージとなる。
フルバックが相手ボールをキャッチした時は、味方が後ろにおらずパスを出せないことが多い。その時は、キックを選ぶか自らランニングで突破するかの判断を的確に成さねばならない。ランニングを選んで、敵にタックルされ捕まってしまうと最悪だ。味方は全て、後ろに戻ってから密集に入らねばならない。敵にボールを獲得される可能性大だ。
このランニングスキルに優れたフルバックは、松島とフィルヨーンだ。野口もこのスキルが高いことが分かった。しかも若いので伸びしろも大きい。
フルバックに求められる三つの能力。
松島幸太朗は、キック力に課題があるも、ランニングによる突破力はピカ一。五郎丸歩はランニングによる突破力に課題があるも、キック力と安定感は抜群。野口竜司は、先輩たちに比べて迫力は劣るが、安定感があり若く伸びしろが大きい。(ファンデンヒーファーとフィルヨーンは、他の国の代表になったことがあり、日本代表にはなれない。)
他の国の代表と比べていずれも遜色ない。むしろ日本代表の強みとなり得ると思う。
2019年ワールドカップに向けて、フルバックのポジション争いは楽しみである。
サンウルブズの次の試合 7月15日 対ブルーズ(ニュージーランド) 12:05 秩父宮ラグビー場にて
今期のスーパーラグビーの最終戦
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