6月10日 熊本・えがお健康スタジアムで開催された、ラグビー日本代表対ルーマニア代表の試合は33対21で日本代表が勝った。
この試合、スクラムは、世界一のスクラムと称されるルーマニアに対して劣勢であり、ラインアウト後のモールも押されて苦戦した。 一方で、良かったのはディフェンス。個々のタックルも確実に決まっていたし、組織ディフェンスもきっちりとできていたと思う(モールのディフェンスには課題あるも)。
個々の選手では、久しぶりに日本代表に復帰したリーチ・マイケルと、小倉順平が良かった。
小倉順平はスタンドオフ(10番)。昔から司令塔と言われているポジションだ。 今回は、このスタンドオフについて語りたい。
昨年の日本代表では、田村優がメイン。小倉順平はサブであった。
田村優は、昨年6月のスコットランド戦で素晴らしいプレーを見せた。特にキックが良く、五郎丸の抜けた穴を感じさせなかった。 2015年のワールドカップと2016年からのスーパーラグビーへの参戦により、最も成長した選手の一人だと思った。
今年スーパーラグビーに参戦2年目のサンウルブズでも、田村優がメインのスタンドオフで、小倉順平がサブであったが、日本代表の対ルーマニア戦では小倉順平が先発した。
スタンドオフが司令塔と言われるのは、バックスの攻撃の起点となり、バックスラインにボールを回すか、キックを蹴るか、自分で抜いていくかの判断を瞬間的に行うプレーが多いからだ。 パス、キック、ランのスキルが全て優れているともに、ラグビーのセンスが抜群でなければならない。
昨年のサンウルブズのメインのスタンドオフであるトゥシ・ピシ(サモア代表でもある)は、このスキル、センスとも抜群で、フォーワードが苦戦するサンウルブズにあって、得点力のあるバックスの起点となり面白い展開ラグビーを主導。ファンタジスタとも称された。
過去の日本代表のスタンドオフで有名なのは、松尾雄治と昨年亡くなった平尾誠二(平尾はインサイドセンター12番としても活躍した)。
二人とも素晴らしいラグビーセンスを持っていたが、キックでは松尾雄治、走力とディフェンスでは、平尾誠二の方が優れていたと思う。
このスタンドオフのラグビーセンスで最も重要なのは、相手ディフェンスと味方の選手の状況を瞬時に判断して、キック、パス、ランの内、最も効果的なものを選択し、それを狙ったとおりに実現させる能力である。
そして、もう一つ重要なのは、紙一重のところで相手を自分で抜き去るスキルである。
この敵をぎりぎりのところでかわして攻撃するスタイルは、剣豪やボクサーに通じるところがあると思う。今日は、この点に注目したい。
スクラムハーフからボールを受けた時点で、スタンドオフがバックスの一番前に居る。この一番前にいる選手が、ほぼ真っすぐに走って一度切りのフェイントかステップで対面のディフェンスを抜き去れば、相手フォワードのディフェンスも届きにくく、最も効率的に素早く前進できるのである。
相手と紙一重ですり抜け、早いスピードで走り抜けるほど、相手のダメージも大きい。
さらに言えば、相手に「このスタンドオフは自分で縦に抜く能力が強い」と見られると、ディフェンスは一旦スタンドオフをマークするので、外側のセンター、ウィングの方へのプレッシャーが遅れ、結局バックスライン全体のアタック力が高まることとなる。
この縦に強いという点で言えば、平尾誠二がピカ一であった。
最近で言えば、2015年のワールドカップでメインのスタンドオフを務めた、小野晃征が優れていたと思う。
そして、今日のルーマニア戦の小倉順平。
縦に2本良い走りがあった。司令塔としての判断力も問題なかったと思う。 さらに、ゴールキックとペナルティーキックを、端っこの遠いところのを含めて7本全て決めた。
早稲田大学からNTTコミュニケーションズ入りして、まだ24才。
スタンドオフには、松田力也、山沢拓也と大学卒業したての将来有望な若手もいる。
2019年ワールドカップへ向けて、いずれの選手もまだまだ成長してくれると思う。期待したい。
6月の日本代表の試合
6月10日(土)日本代表vsルーマニア代表 熊本・えがお健康スタジアム
6月17日(土)日本代表vsアイルランド代表 静岡・エコパスタジアム
6月24日(土)日本代表vsアイルランド代表 東京・味の素スタジアム
楕円球 〜日々思う〜 バックナンバー(ラグビー狂の筆者が、ラグビー日本代表へのエールを通じて、ラグビーの魅力を語ります)
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