日本代表メンバーを多く含むサンウルブズ。 5月20日の対シャークス(南ア)戦は、17対38で敗れたが、後半残り10分までは4点差で競っており、面白い試合であった。 今季、まだ一勝しかできていないが、強敵と良い戦いができている要因の一つは、スクラムの安定にある。
スクラムと言えば、2015年のワールドカップで3勝した日本代表のマイボールスクラムの獲得率は100%と安定しており、大活躍の原動力となった。
特に、スポーツ史上最大の番狂わせとも言われた対南ア戦の勝利は、最後の5分間に得たペナルティーの機会に、確実に入る位置でのペナルティーキック(3点)を狙わずに、スクラムを選択してトライ(5点)を果敢に狙い、これが成功したことから生まれた。 ワールドカップ参加チームの中で、ほぼ最軽量の日本代表が、敢えてリスクを冒して、引分けでなく勝利を得る選択をしたのは、この試合、ここまでの安定したスクラムに自信をもっていたからに違いない。
スクラムの強さとは不思議なものである。 ワールドカップの時のスクラムの前3人(フロントロー)の選手を多く抱えるサンウルブズが、昨年のスーパーラグビーでは、身体の大きい南アのチームにスクラムでコテンパンにやられ続けた。
スクラムでコテンパンに負けると勝負はキツイ。 スクラムを落としたと見なされた側は、大きなペナルティーを課されるからだ。 ペナルティーを取った側は、ペナルティーキックで3点を狙う、タッチキックで前に進んだ上マイボールラインアウトを貰う、或いは速攻を仕掛けたり、スクラムトライを狙ったり、有利な選択肢が沢山ある。
TVで見ていてどちらがスクラムを落としたか分からない場面がよくあるが、よく分からない場合は、それまで押されていた側が落としたと見做されることが多いという。
このスクラムの柱(プロップ)となる最前列の両端、1番と3番の選手は、総じて愛されキャラが多く、武勇伝が多いように思う。 最近のプロップは、ラックから出たボールをスクラムハーフからバックスの前で貰って突っ込んだり、ディフェンスもバックス並みに行ったりして、色々な役割を担っているが、昔のプロップはスクラムとラックに突っ込むのが主たる役割であった。 その分、スクラムに命を賭けているようなタイプが多く、試合に負けるよりもスクラムに負ける方が悔しい連中も多かった。 身体はズングリタイプで力持ちだが、足はあまり早くなく、試合で一度もボールを持つことが無いような日もある。だけどラグビーは大好き。というようなのが、典型的なプロップ像であったように思う(違ってたらごめんなさい)。
筆者の高校時代、一年下のプロップの一人(翌年のキャプテン)が、試合中にスクラムで負け続け、悔しくて対面のプロップの頬にかぶりついたことがあった。 被害者のアピールでペナルティーを取られたが、その悔しさはよく理解できた。
一昨年、ワールドカップの主催国でラグビーの母国であるイングランドが、ベスト8に残れないという失態を演じた直後、日本代表のヘッドコーチであったエディ・ジョーンズ氏をヘッドコーチに迎えたが、ジョーンズ氏が指名した新キャプテンは、過去に相手の頬にかぶりついた経歴を持つ熱血漢のプロップであった。 その後、新チームでイングランドは連勝を続け、現在、世界ランキング2位である。
昨年スクラムで苦戦したサンウルブズだが、今年は安定したスクラムを組み、成長の跡が大きく伺える。 スクラムは毎回相手と違った駆け引きがあり、経験が物を言う部分が大きいという。 今年の成長は個人個人が強くなったのもあるだろうが、むしろフォワード8人で組むチームとしてのスクラムが強くなったということだろう。
かようにラグビーにおいて奥深く重要なスクラム。そのスクラムにおいて著しい成長を見せるサンウルブズ、そして日本代表。 スクラムを土台に試合に勝ち切るラグビーを、今後に期待したい。
サンウルブズの次の試合 5月27日 対チーターズ(南ア) 14:15 秩父宮ラグビー場にて
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