PDCAマネジメントサイクルを回して経営管理することができるよう、「部門別の月次損益計算書を、予算と実績を対比させて作成する」ための会計システムを構築します。
前々回は、“部門別損益計算書”を作成するためのシステムづくり、前回は、“月次損益計算書”を作成するためのシステムづくりについて考えてきました。
今回は、“予算実績比較損益計算書”を作成するためのシステムづくりについてです。
“予算実績比較損益計算書”のフォーマットは、次のケース8のように、このシリーズのPで考えた“対前期比較損益計算書”のフォーマットとほぼ同じです。
“対前期比較損益計算書”との違いは、右端の差異分析の欄の“伸長率”が“達成率”に置き換わっていることだけです。
“達成率”は、「実績金額÷予算金額」を%で表します。予算どおりに実績を達成すれば、達成率100%です。
右端の差異欄を見て分析をする際に、重視するポイントは項目ごとに異なります。
売上高は“達成率”を重視し、営業利益や経常利益、および販管費や営業外損益の各項目などは“金額”を重視するのが良いでしょう。
売上高について、同じ100万円の金額が予算額を超えて計上されても、1億円の予算に対してなら1%でしかないのに、1000万円の予算に対してなら10%にもなります。%(率)で示さなければ、評価の程度か分かりません。
これに対して、営業利益や経常利益については、売上高と比較するとかなり小さい金額になったり、赤字になったりするため、“達成率”が全く意味をなさないケースがあります。
また、利益がいくら予算以上に計上されたかということは、その後の配当政策・賃上げ政策・投資政策などに大きく影響することでもあり、%(率)では実感として判断できず金額で認識しておくことが重要です。
ケース8の事例では、次のようにポイントを押さえて分析します。
まず、概略を大きくつかみます。緑色の囲み部分を見てください。
- 売上高は対予算 101%で、わずかに目標を上回っています。
- 売買利益率は、42.8%で、前年の 41.4%より 1.4%改善され、その結果、売買利益は売上高の対予算増加額 1,000千円を上回る 1,880千円の増加となっています。
- 販管費は、対予算 2,900千円の増加で、売買利益の増加額を上回り、その結果として、
- 経常利益は、対予算 1,020千円のマイナスとなってしまいました。
総合評価としては、売上が予算を達成したものの、経常利益が予算に対してマイナスだったので、この期の評価は芳しくないものになるのでしょうか?
業績評価を適切に行うには、もう少し詳細を見てみる必要があります。今度は赤色の囲み部分を見てください。
- 売上高の内訳を見ると、A商品群の達成率が 97.6%、B商品群の達成率が 115.0%です。このG社の経営計画の骨子では、売上が減少傾向で売買利益率も低いA商品群の売上よりも、利益率の高いB商品群の売上を拡大していく政策をとることとしていました。その視点から言えば、狙いどおりの結果だと言えます。
- 売買利益率は、B商品群は予算どおりの 60.0%、A商品群は予算を 1.0%上回る 38.0%です。A商品群は、売上が低下しても売買利益率は高めていく方針としていましたので、こちらも狙いどおりです。販売量の多いA商品群の売買利益率を改善し、売買利益率の高いB商品群の販売量が増えたので、売買利益合計では、上述のように売上の増加以上の増加を見せています。
- 販管費は、人件費と営業費が予算を超えて支出されていますが、その原因はB商品群を拡販していくために新規採用した人の給与が予算以上だったこと、またB商品群拡販のための販促費が予算以上にかかったことにあります。
- 結果として、経常利益は予算を下回ってしまいましたが、原因を詳細に見ていくと、経営計画の骨子に定めていたB商品群の拡販のための対策がしっかりと進んでおり、その結果も出ているので、資金繰りに問題がなければ、計画1年目は良い評価をつけてもよいのではないでしょうか。
次回は、比較損益計算書を分析するための会計システムについて、もう少し検討していきましょう。
このような経営計画は役に立たなくなる可能性があります |
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その㊲ |
予算と実績の差異分析資料が出ない。 |
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