前回、中長期経営計画では「今までのやり方を変える、あるいは新しいことに取り組む」といった革新的な施策や活動を取り入れるケースがあり、そのような場合には、組織や人事の刷新を計画策定を機会に行うのが望ましいということを書きました。
もう一つ、中長期経営計画の策定を機会に行うべきことは、人事評価のしくみを新しく導入したり、変更することです。
経営計画をうまく遂行するためには、従業員にやって欲しいことを明確に示すとともに、仕事の成果を公正に評価し、それを給与や昇進・昇格などの人事に反映するするしくみを作っておくことが大切です。
そのために、経営計画の内容と人事評価のしくみが連動しているか、次のようなことを点検し必要に応じて新しく構築したり、修正したりすることが大切です。
@成果主義の導入
年功序列的な人事管理を行っている会社は、これを機会に成果主義的な人事管理を導入することを検討してみましょう。
社員の担う役割の難易度を評価するとともに、与えられた目標の達成度を評価することにより、昇給額・賞与額を決めたり、昇進・昇格の判定をします。
年功序列的な人事管理と成果主義的な人事管理をいかにうまく組み合わせるかは難しい問題ですが、自社の現状に合ったしくみづくりを行うことが大切です。
A評価項目や評価基準の変更
多くの会社は、従業員の業績評価について、売上に関する目標数値と、その達成度による評価のしくみを持っていますが、売上だけを評価項目とすると経営にひずみのくる場合もあります。
利益率の低い売上に偏ったり、売掛金の回収が長期化したりすると、売上目標は達成できていても赤字となったり、資金繰りが苦しくなったりするからです。
そのようなことを是正するために、経営計画の「目標」に利益目標を設定したり、「方針」に確保すべき売買利益率や、守るべき回収期限を設けたりします。
その場合は、従業員個人ごとの業績評価についても、会社や部門の利益目標の達成度を加味したり、低い利益率や長い回収期間のものは減点するなどのしくみを加えると良いでしょう。
売上目標の達成度は会社の業績にとって最も重要で分かりやすいものですから、そのまま評価基準として残しつつ、他の重要な要素を加える形の評価のしくみを作るのがうまくいくコツです。
Bプロセス(過程)の評価を加える
仕事の遂行度や目標達成度などの結果だけで評価すると、仕事の仕方がどうしても短期的志向になってきて、企業も個人も長期的な成長につながりにくくなってくる場合があります。
そこで、経営計画の内容に沿って、行動の仕方や、仕事に対する取組み姿勢、能力の高まり等の、目標達成までのプロセス(過程)を評価する方法があります。
取引先を何軒訪問し何件の有効な面接を行ったか、仕事に対する改善提案をどれだけ行ったか、同じ仕事をこなすのにどれ位時間短縮したか、といったことを評価指標として加えることにより、目標達成のためにどのように行動したらよいかの方法をわかりやすく示すことにつながります。
人は、仕事の成果が認められ納得のいく評価を受けることで、仕事に対する意欲が向上し、さらに良い成果を生み出すことにつながっていきます。
そのためには、仕事における自身の役割や目標を明確にされていること、および評価のしくみを知らされていることが必要です。
ただし、人を評価することは大変難しいことなので、人事評価のしくみを新しく作ったり変更したりする場合は慎重に行わねばなりません。専門家のアドバイスを受けることも必要でしょう。
会社全体で真剣に取組むことが必要なテーマであるので、中期経営計画の策定を機会に行うとうまくいくことが多いのです。
次回は、経営計画の広報について書きます。
このような経営計画は役に立たなくなる可能性があります |
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その㉗ |
人事評価のしくみが陳腐化している。 |