数値計画としての損益計画・貸借対照表計画・資金繰り計画まで作成すれば、文章で表現される計画から始めた中期経営計画づくりは、全て揃ったことになります。
全体の構成を記載しておきます。
T.自社の分析:「誰に何をどれだけ売るか」「強み・弱みの分析から問題点と課題(解決策)を抽出する」
U.計画の骨子:「目的」「目標」「方針」「重点施策」「活動計画」
V.数値計画 :「損益計画」「貸借対照表計画」「資金繰り計画」
最後に、ここまで作成してきた経営計画全体を俯瞰的に眺めて、計画の骨子について数値計画の裏付けがあるか、つじつまが合っているか、整合性を確認し調整していきます。
俯瞰し調整するポイントは、主に次のようなことです。
@お金が足りなくなる場合の調整。
前回見たように、資金繰り計画において資金ショートするような場合は、資金調達の方策を考えるか、あるいは資金の入りを増やす、または資金の出を減らす方策を考えねばなりません。
その結果、資金調達のための施策や活動計画を追加する、あるいは売上高や利益率が高まるような施策や活動を考える、または経費を減らすように活動を制限する、といったことを検討せねばなりません。
A利益が足りない場合、あるいは多くなりすぎの場合の調整。
計画の骨子で「目標」に設定した売上高や利益率を用いて損益計画をシミュレーションした結果、利益が少なすぎる場合は再度売上高や利益率、販管費などを見直して、損益をシミュレーションすることとなります。
その結果、計画の骨子で設定した目標売上高や利益率が数値計画と合わなくなれば、必要に応じて骨子で定めた「目標」や「方針」を修正することになります。
B営業や生産など各機能や部門間の目標が異なる場合の調整
営業部門の立てた売上目標と、生産部門の生産目標がつじつまの合わないことはよくあります。
そのまま放置すると営業が販売促進や広告宣伝に費用をかけたにかかわらず売る商品ができていなかったり、逆に生産し過ぎて在庫が積みあがったりします。
特に、新製品の発売については、各部門の新製品導入のためのタイムスケジュールがつじつまの合うようにすることが大切です。
基本的には、各部門がよく話し合って、整合性のとれる計画としなければいけません。
ただ、難しいのは営業の予測は思い通りにならないことが多いので、実際の月々の生産計画は中期計画にこだわらず、柔軟に対応できるようにすることが重要です。
C人が足りなくなる場合の調整
一旦、各部門が計画を立ててみると、人を増やさなければ消化できない重要施策が沢山あり、人を増やさなければ計画を遂行できないと思われるケースがよくあります。
人員を増やす計画を立てても、損益計画や資金繰り計画において問題がなければ良いのですが、実際は人を増やす余裕のないケースが多くあります。
こうしたケースでは、他の部門から人を異動させたり、一人の人に複数の業務を担当してもらわねばならないことがよくあります。一部の活動計画のスケジュールを調整して、後回しにしたり、あるいは取りやめたりする必要があるかもしれません。
このように計画全体を俯瞰して、総合的な調整を行うことは、事業活動の優先順位をどうするかの決断を求められることが多く、経営者の重要な役割となります。
総合的な調整が終われば、会社として、中期経営計画の確定を決議し、その後、社内外への広報、年次計画の作成、計画と実績の管理へと作業を進めていきます。
このような経営計画は役に立たなくなる可能性があります |
⇩
その㉔ |
部門間の調整ができていない。 |